専門家に聞く!企業が求めるグローバル人材像

転職市場で生き残るには語学力と高い資質が必要です

企業がグローバル人材に求める英語力を明確に理解するには、転職市場で望まれる人材を知るのが早道。株式会社リクルートキャリアで企業と個人のグローバル人材登用支援を担当している遠藤泰弘さんに、企業の求めるグローバル人材像について聞いた。

遠藤泰弘さん

株式会社リクルートキャリア
RGF HR AGENT JAPAN
Managing Director
遠藤泰弘さん

個人の転職と企業の人材戦略を支援するリクルートキャリア。RGF HR AGENT JAPANでは、マルチナショナルカンパニーとグローバルタレントの出会いを支援するサービスを提供している。

現在、企業が求めているグローバル人材とはどんなものなのか。遠藤泰弘さんに、これからのグローバル人材に必要とされる資質について聞いた。

会社の方針に従うだけではNG

理想的なグローバル人材に必要な力として、遠藤さんは次の5つを挙げる。自立性/自律性、コミュニケーション力、語学力、変化対応力、そして責任感である。

これらのうち最も重要なのが、自立性だと遠藤さんは指摘する。「自立性とは、未知の問題でも自分の頭で考え、さらに周囲を引き込んで解決する力を指します。速いスピード感で臨機応変な判断をするグローバルビジネスの現場では、会社の方針を遵守するだけでは足りません」。管理職のレベルになるとさらに、セルフマネジメントができるという意味で「自律性」も求められる。これは、俯瞰的な視点から自分の判断や言動を点検する客観性を持つことも含む。「自律性はほかの力とは違い、ビジネスの中で自覚的に養う必要があります。習得するのが一番難しい能力とも言えます」。

2番目に必要なのは、コミュニケーション力だ。ちなみに語学力つまり英語力は、コミュニケーション力に内包されると遠藤さんは指摘する。なぜならグローバル化を推進する企業ではどうしても英語がベースとなる場合が多いからだ。「自分と異なる国籍や宗教を持つ相手の要望を的確につかみ、対話ができる。利益が相反する状況で交渉ができる。そういったレベルのコミュニケーション力と英会話力が求められています」。

想定外の事態に、臨機応変の判断を

次の変化対応力とは、変化していくことが前提の海外環境で、自分の人生と自社のビジネスの舵を上手に切る能力である。「日本とは商習慣の違う海外では、想定外の事態が起きることがあります。政情の変化によって大きな転換を強いられることも十分にあり得ます。そうした環境では、日本の常識に縛られずに、自社の利益と自己のステップアップにつながる道を見つけ出し、機敏に対応する力が必要です」。

そして遠藤さんが5つ目に挙げる責任感とは、想定外の事態が起きたときにもスピード感を持って、ゴールを達成しようというスタンスを指す。「どんな状況でもタスクを達成しようという執着心、とも言えます」。これはグローバル人材としての土台となる部分であると遠藤さんは説明する。「最後の変化対応力と責任感の2つは、懸命にビジネスと向き合っていけば、後天的に身につけることができると思います」。

pointグローバル人材に必要とされる5つの力とは?

1 自立性/自律性

自立性とは、自分の頭で考えて、周囲を巻き込みながら問題を解決する力のこと。マネジメント層ではさらに、臨機応変に対応しながらも自分を客観視する「自律性」が求められる。

2 コミュニケーション力

ダイバーシティーの現場では、国籍や宗教が異なる人々の要望を的確につかみ、対話をするコミュニケーション力が必須だ。論理的な説明能力、相手の理解を確かめる繊細さも含まれる。

3 語学力

TOEICテストのスコアは600~700点程度、ビジネス英会話中級程度の英語力は大前提。なかには、スペイン語やポルトガル語、中国語など、英語以外の言語スキルを求める企業もある。

4 変化対応力

日本と商習慣の違う海外の環境に即座に対応できる力。海外の政情に大変化が起きたときなども、他の地域と連携して顧客を導くなど、業務を止めずに維持する忍耐力や機動力が必要となる。

5 責任感

どんな状況下でもタスクを達成する執着心。スピード感を持ってゴールに到達する情熱。想定外の事態にも当事者意識を持って臨む、グローバルビジネスパーソンの土台となるスタンスといえる。

英語力はTOEIC®600点以上が目安

リクルートキャリア登録者別TOEIC®スコア

企業側のグローバル人材へのニーズは、ここ数年で変化を見せてきていると遠藤さんは話す。「数年前まで英語力を求められるのは、営業やマーケティングなど外向きの部署、技術職ならマネジメント層だけでした。それが現在では、人事や法務、経理などの事務系専門職のビジネスパーソンまで、英語力の必要性が広がっています」。 これは、海外での販路拡大や本社の海外移管や現地工場での技術支援など、企業のグローバル化が進んだためと言える。そのため、英語以外の語学力を評価する企業も増加傾向にある。

「スペイン語やポルトガル語、中国語やマレーシア語などができるトリリンガル人材を求める企業も増えてきていますね」。

リクルートキャリアのハイキャリア向けサービスを利用する20~30代の登録者は、TOEICのハイスコア取得者が多い。14ページのグラフ(左)を見ると、特に20代では50%以上のビジネスパーソンが800点以上を取得している。「企業側は、その人材が英語を使ってビジネスができると判断する点数として最低600点以上を考えています。600点以上ないといけないということではないのですが、転職後に実務で英語力をブラッシュアップしていくにしても、その程度の英語力がなくては難しいと判断されてしまいます」。

留学・海外赴任の経験が評価される

とはいえTOEICの点数だけが高くても、ビジネス英会話ができないようでは意味がない。企業が英語力を推しはかる上で高く評価するのは海外赴任の経験だ。「留学経験があったり、世界トップランクの大学でのMBA(経営学修士)を取得しているビジネスパーソンは、グローバルビジネスのフレームを理解しており、ネットワーキング力がある、という観点から歓迎する外資系企業もあります」。

留学経験や英語でのビジネス経験もない人は、IELTS(International English Language Testing System)やBLATS(Business Language Testing Service)などのビジネス英会話力テストで高得点を取得しておくといい、と遠藤さんは言う。「特にIELTS やBLATS は、既に国際進出が進んでいる大手メーカーや総合商社で、グローバルな社員の英語力を計る指標として採用しているテストです。TOEICに比べてメジャーなテストではないため、これを履歴書に記載している転職希望者はあまり見かけませんが、プラスαの材料と判断される可能性は大いにあると思います」。

英語力や専門性の有無で年収が大きく左右される

リクルートキャリアで転職が決定した利用者の年代別収入

企業が人材の採用を決定する材料は英語力だけではなく、これまでの職務経験や専門性などが重く見られる。15ページの転職成功事例を見ると、それぞれが転用可能な職務経験を持っていたり、あるいは実務の中で磨けば対応できる素地がある、と企業に判断されて採用が決まっていることが分かる。

しかしながら、その一方で全員がTOEICで700点以上を取得していることも無視できない。「留学経験や海外勤務の経験など、実務での英会話力を裏打ちする経歴がなく、TOEICは400点以下という場合では、たとえ企業側の要望にマッチするような職務経験がある人でも、グローバル人材としての登用は厳しいと言わざるを得ません」。

特に年収600万円以上のハイキャリアへの転職を目指す場合には、高い英語力が必須であることは上右のグラフからも分かる。「同年代で年収を比較すると、非英語人材に比べ、英語人材は100万~200万円程度、年収が高くなります。年代が上になると、その差はもっと開いていきます」。企業のグローバル展開が広がる昨今、もはや高い英語力がなくては、ビジネスパーソンとしてのサバイバルは難しいのだ。

グローバル市場での転職・成功事例紹介

ハイキャリア属性の転職では、やはり高い英語力が欠かせない。ここでは株式会社リクルートキャリア登録者で転職に成功した20~40代のビジネスパーソン4人を例に挙げ、転職成功の決め手となった要因を遠藤さんが分析する。

case 1 Aさん(20代)「よりグローバルを体感できる、外向きの職種に転向したい!」外資系企業・総務→大手商社・海外営業 TOEIC700点

外資系企業から大手商社への転職に成功した例です。今後の成長を期待できる20代は、語学レベルがあまり高くなくとも、グローバル人材として登用されるケースが少なくありません。Aさんは前職が外資系企業でコミュニケーション力も高かったことから、海外営業の素地があると判断されて、転職に成功したのだと思います。

case 2 Bさん(30代前半)「海外進出中の勢いのある企業で働きたい!」コンサルティング会社・コンサルタント→事業会社・海外事業戦略部 TOEIC900点

コンサルタントから事業会社勤務への転身に成功したBさんのベースには、高い英語力とリレーション構築力がありました。海外事業戦略を担当したことはありませんでしたが、アドバイザーの立場でプロジェクト推進をサポートした経験を持っていました。転職した事業会社には、この経験を買われて、転職に成功したのではないかと思います。

case 3 Cさん(30代後半)「海外で今後のキャリア形成をしたい!」自動車メーカー・財務会計→化学素材メーカー TOEIC750点

Cさんにはそれまで海外赴任の経験はありませんでしたが、前職の自動車メーカーで会計管理を担当していた国・地域が、ちょうど転職先の化学素材メーカーが今後の展開を考えていたエリアでした。Cさんは多国間の調整をした経験があり、海外勤務に耐えうる自立性があると評価されたことが、転職成功の要因になったと思います。

case 4 Dさん(40代)「経験を生かして業績のいい会社に移りたい!」半導体メーカー・開発エンジニア→自動車メーカー・開発エンジニア TOEIC800点

Dさんは転職先の自動車メーカーが開拓したいと考えていた顧客を、前職の半導体メーカーで担当していたことが、転職成功のきっかけになりました。40代になると、同じ職種での経験や業界に関する知識、英語力やコミュニケーション力だけでなく、このように特定企業の顧客を担当していたという経験が重要視されることが多くなります。

遠藤泰弘さん
Yasuhiro Endo

1992年からエージェント事業に携わる。IT・金融・第二新卒領域の立ち上げなどを経験した後に、2010年よりハイキャリア・グローバル領域を担当。グローバル競争に打ち勝つための企業の採用支援、ハイキャリア・グローバル人材の転職支援、国内資本系企業の世界進出の橋渡しのトータルコーディネートを推進している。